光学・照明シュミレーションの有効活用で海外に挑戦する | GEE株式会社蒲原代表


自動車や室内における照明の動作をコンピューターで再現し、光の色や明るさを把握することを「光学・照明シュミレーション」と言います。この技術を使ったシュミレーションソフトは、より実用的な照明を作り出すために多くの自動車メーカーが導入していますが、取り扱いは難しく導入しても使いこなしている企業は多くありません。
今回は、光学・照明シュミレーションソフトの専門的なノウハウ提供とコンサルティングを行っているGEE株式会社代表の蒲原氏にお話を伺い、事業戦略や今後の展開について聞いてみました。

目次

蒲原 正広 氏

1969年生まれ、東京世田谷区出身。日本工業大学大学院卒業後、光ファイバーのディバイス研究職、ベンチャー企業を経て、フランスの光シミュレーションのソフトメーカー日本法人で技術コンサルティングを経験。2016年年2月、浜松市西区の光産業創成大学院大学内でGEE株式会社を設立。

光学・照明シュミレーションの可能性を引き出す起業家へ


小澤:研究職、技術コンサルティングを経てGEE株式会社を設立された蒲原さんのご起業の経緯を教えてください。
蒲原:子どものころから社長になりたいと漠然と思っていました。手に職を付けたいと技術者になり、たまたま光と出会いました。研究職、ベンチャー企業を経て、LEDの中小企業のメーカーに転職。そこでは従来とは違った光のシュミレーターを使って、物を作らない「ものづくり」をしました。
小澤:物を作らない「ものづくり」とは初めて聞きました。
蒲原:これがすごく効率的で、従来だと設計図を引いて金型を作り、製品が出来上がるまでに2~3ヶ月かかっていたことが、光のシュミレーションは設計開始してから物があがってくるまで最短で一週間です。そこで、光のシュミレーションは可能性があるなと感銘を受けました。
元々社長になることが目標だったので、ビジネスを学びなおすためにビジネススクールに入り日本の技術系MBAと言われているMOT(Management of Technology)の修士号をとりました。また、光に関するデザインの仕事をしているのでデザインに興味を持ち、デザインの大学院で学びました。
この時点で45歳ぐらい、ここに至るまでに時間がかかったかなと。起業拠点はどこにしようかと考えたときに、静岡県浜松市の光産業創成大学院大学と縁がありました。そして、大学に入学をして博士号を目指しながらGEE株式会社を設立しました。

目指すのは100年後に意義のある、最新技術と文化を融合させた至高のデザイン

画像引用元:GEE株式会社の光事業のページ


小澤:御社の事業内容について具体的に教えてください。

蒲原:
自動車のランプやインテリアのディスプレイ、またディスプレイに使われる新しい素材の研究開発をしています。そこから、大手自動車メーカーとサプライヤーと一緒に、企業価値を表すデザイン性のある光らせ方を事業にしています。
ヨーロッパの人たちからすると、「新しい」はイケてるワードではありません。その会社の文化を継承しつつ現代の技術や価値観を加えて進化させること、100年後に見て「本当に意義のあるデザインかどうか?」を作り出すことが仕事です。その辺りを文脈なしに目先だけ変えても「新しい」をやることは定着しません。
いかに会社の文化に現代の技術や価値観を加え、効率的に作り上げて世に出していくかが重要です。

海外進出の第一歩はドイツ、主体的に世界へ仕掛けていく事業戦略

(左)海外事業部長アセリ氏、(右)代表取締役蒲原氏


小澤:海外メーカーでの経験は、ご起業後の事業展開にどう生かされているのでしょうか。
蒲原:当社の海外事業部長にキルギス出身のアセリ氏が参画し、コンテンツを翻訳して海外に売り込んでます。ベルリンから日本のベンチャー企業を探している会社が来日し、ベルリンで事業内容を提案しないかともちかけられました。彼女が英語で提案して、ベルリンの大手企業とマッチングしてビジネスを展開する予定です。
日本とドイツは、お互いの良いところを補完し合えるパートナーとして相性がいいと考えており、当社は日本でスタートアップして、海外の第一歩はドイツです。今月はベルリンにPRをしに行き、その場で商談してくるつもりです。
マーケットとして、日本とドイツは似ています。自動車メーカーとサプライヤーもある。サプライヤーとメーカーはお互いの国に売り込む。ブランド力はドイツが強いですね。高級ブランドは、ドイツはBMW、アウディ、メルセデスベンツの御三家、日本はレクサスです。メーカーの数は日本の方が多く、販売台数も日本の方が圧倒的に強いです。
小澤:9月に行われるドイツベルリンのベンチャー支援プログラム「Admacom」に参加されるとのことですが、御社が選ばれた理由は何だと思いますか?
蒲原:ベルリンの企業に「まずはじめにBMWと仕事がしたいので、紹介してほしい。」と言いきったところが、相手の印象に残ったのではないでしょうか。彼らは「BMWは知らないが、アウディなら紹介できる」と言っていました。私は事業を展開する上で、主体的にしかけていくことが重要だと考えています。
小澤:最後に、今後はどのように事業を展開していくのでしょうか?
蒲原:当社は、デザインコンテンツをはじめました。実用的なデザインや、安全性とデザインを両立したコンテンツを展開していきます。また、当社としては人のお手伝いだけでいいのか?と疑問に思っており、今後は自らもメーカーになりたいと考えています。

編集部コメント

光研究の最前線を走りながら、革新的なアイディアや技術で事業を仕掛けていくGEE株式会社代表の蒲原氏。常に海外を見据えて挑戦していく姿勢は、企業だけでなく、ベンチャーに憧れる多くの若者を魅了するのではないでしょうか。今後のGEEの展開に目が離せません。

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