目指すのは、起業を目指す人々を繋ぐ存在 | 浜松信用金庫の辻村氏にインタビュー


起業をしたいと考えている方々は、第一歩としてどんなアクションを起こすでしょうか。初めて事業を起こす方は、何から手をつけたらいいのか、どこでどんな手続きをすればいいのか、わからないことや不安がたくさんあると思います。
そんな起業したいと考える人々をサポートをする環境や支援機関が、浜松にはあります。その一つが、浜松信用金庫(はましん)です。近年、浜松のスタートアップを活性化する取り組みやイベントを積極的に行っているようです。今回は、浜松信用金庫で産業支援活動に尽力する辻村昌樹氏にお話を伺いました。

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辻村昌樹 氏

浜松で生まれ育ち、地元に貢献したいという思いから浜松信用金庫(はましん)に入社。8年間はましんの営業店舗で働いたのち、公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構(旧名:浜松地域テクノポリス推進機構)で2年間の勤務経験をする。その後再びはましんに戻り、現在は法人営業部 地域活性課で浜松の産業支援活動に従事する。

産業支援の世界に飛び込んだ2年間の経験を生かす


岩渕:辻村さんが現在はましんの地域活性課で行っているお仕事について、詳しく教えていただけますか?
辻村:私の仕事は、企業様が中長期的に事業を行う際、一般の融資などを行う営業店がサポートできない部分を支えることです。これは、私が浜松地域イノベーション推進機構で産業支援について学んだ2年間の出向経験を活かせる仕事です。実は浜松地域イノベーション推進機構に勤めていた当時から、はましんの地域活性課で働きたいと、会社にはずっと伝えていました(笑)希望を通していただき、はましんに戻って地域活性課で現在まで約10年間産業支援の仕事に携わっています。
岩渕:辻村さんが取り組んでいらっしゃる、創業支援の取り組みはどのようなものですか?
辻村:主に、創業や新事業を始める方が事業計画を作る際のサポートを行っています。事業計画を作る際、数字の面では金融関係者としての知識がありますが、より突き詰めていくと、私たちの力だけでは十分ではありません。そこで、外部の人材を活用した専門家の派遣を行っています。企業様の課題やニーズに合った専門家を私たちでチョイスし、ともに解決に導く活動です。
岩渕:辻村さんが執筆された「補助金の基礎知識」に関する記事を拝読しましたが、はじめて起業する方が一人で補助金の申請書をゼロから作るのはかなり難しそうだと思い、サポートは本当に大事だと思いました。
辻村:そうですね。私たちは補助金に関する申請書作成のサポートも行っています。補助金の申請書を書くコツは書類の種類によって異なるので、とても難しいのです。補助金業務に関しては、はましんで10年以上サポートを行っており、ノウハウが蓄積されています。私たちのノウハウを活用し、企業様に対してフィードバックを行うことができます。まさに、みなさんと一緒に事業を作り上げていくイメージですね。

浜松で起業することのポイントは?


岩渕:浜松で起業する上で良い点はなんだと思いますか?
辻村:浜松では起業に対するサポート体制は意外と揃っているのですが、情報が十分に整理できておらず、起業したい方がまずはどこに行けばいいのか、どんなアクションから起こせばいいのか、わからないことがあると思います。しかし、そういった課題をサポートする組織は私たち金融機関をはじめ、かなり充実していると思います。私たち金融機関のみならず、産業支援機関にできることも豊富にあります。リソースをうまく活用すれば、事業を立ち上げるときに軌道に乗りやすいと思いますので、浜松にあるリソースを十分に活用していただきたいです。
それから、先輩起業家の方が、これから起業したい方をあたたかくサポートしてくれる姿勢や環境があると感じますね。私の周りにも、そういった方が多い印象があります。その点では、浜松は起業しやすく、サポートが手厚い地域なのかなと思います。
岩渕:浜松には、起業したい方の背中を押してくれる環境があるのですね。反対に、注意すべき点はありますか?
辻村:起業を後押しする環境がたくさんあるということは、「押す」ことが簡単にできてしまう面も意味します。起業したい方には「思い」があるので、後押しされるとすぐに行動してしまう可能性があり、それはリスクかもしれません。すぐに行動する気持ちも必要ではありますが、しっかりと計画を立てることも重要です。事業の立ち上げは誰でもできてしまいますが、立ち上げた事業を継続しなければ意味がありませんよね。押されるだけの支援ではなく、いろいろな方の意見を聞く環境を持つことが大切です。支援機関や先輩起業家、実際の経営者の意見など、偏った意見ではなくジェネラルに、自分が信用できる方の意見を多く聞くといいとですね。
起業となると専門分野を注視しすぎて、どうしても視野が狭くなってしまうこともあります。しかし、俯瞰して客観的に見る目を持っていただくことも大切です。
岩渕:その部分を、はましんが担っていくのですね。
辻村:はい。はましんとして担っていかなければならない部分であり、機会を提供するのも金融機関の役割だと考えています。環境や機会づくりをしたり、ネットワークを繋いだりする立ち位置として活動していきたいと考えています。

起業したい人々をつなぐ「ビジネスコーディネーター」になりたい


岩渕:お仕事のお話からは一旦離れて、辻村さんが個人的に力を入れていることがあるそうですね。
辻村:私は専門的に特化した知識があるわけではありせんが、およそ12年間産業支援の仕事に携わっているので、浜松地域ではどこへ行けばどんな人がいて、どんなサポートや協力が受けられるのかをおおよそ把握しています。いわゆるビジネスコーディネーターですね。企業の方向性を考えたり、足りないリソースは支援機関と協力しながら進めるサポートを行うことができます。
仕事の場面ではもちろんですが、普段の生活の中でも起業したい方が集まりやすい環境を作りたいと考えています。起業したい方たちが交流してネットワークを広げられる場を作り、起業に対するモチベーションが高い方にはどなたにでも集まっていただきたいです。異業種交流会のようなネットワークの場では、業種に偏りが出たり、世代が別れてしまったりすることがあります。しかし、経営者や農業従事者、主婦の方が参加したり、年齢も大学生から50代の方まで、さまざまなジャンルの方が集結すると、知らない世界の話を聞きながらら相乗効果を発揮して成長できます。刺激的な環境づくりが私の役目だと考えているので、コーディネーターとしてコミュニティ作りを極めていきたいです。
現在の行動範囲は浜松地域に限定されていますが、今後は自分の守備範囲を広げ、東京・名古屋・大阪などの都市との交流も深めて行きたいと考えています。企業さんも、地元だけではなく各地方に事業展開していきたいと思いますので、都市や他の地域とのつなぎ役になりたいですね。
岩渕:浜松のスタートアップなら辻村さんに!ということですね。
辻村:そう言っていただけるように活動していきたいと思います!

起業は自分ひとりではなく、広いネットワークを使って


岩渕:今後、はましんが行うスタートアップに関する取り組みを教えてください。
辻村:これから起業したい方を対象とした「はままつスタートアップ創業スクール」を、9〜11月頃にかけ、全8回で行います。創業者のネットワーク作りを継続的に行い、起業に関して広い視野を持つことができる環境を作っていきます。
また、ビジネスコンテスト「はましんチャレンジゲート」も開催します。過去4回にわたって開催し、実際に事業として成り立ったものもあるのですが、私たちが関与したりお手伝いできている部分が少なかったり、金融機関の視点のみでしかサポートできていない部分もありました。
そこで今年度からは形を変え、実際に浜松で起業して成功している方やポテンシャルを持っている方にメンターとしてイベントに参画していただき、一緒に事業計画作りにチャレンジしていただく予定です。
先輩起業家の方が現在までどのように経営されてきたのか話を聞いたり、ジャンルもIT系や社会起業家の方など、多方面から集まっていただきます。ジャンルや専門分野は様々ですが、「起業」という観点でのベースは同じです。コンテストにエントリーする方それぞれに合ったメンターを紹介できれば、と考えています。
岩渕:最後に、浜松で起業を考えている方にメッセージをお願いします。
辻村:自分のやりたいことを実現するという意味では、起業は一つの選択肢ですが、それが全てではないとも思います。創業スクールをやっていても、全ての人が起業家に向いているわけではないと感じます。起業においては、自分の立ち位置を知り、見極めることが大切です。起業して失敗し、リトライできる環境は私たちが作っていかなければならないのですが、日本の慣習の中ではまだまだそれが実現できていない部分があります。今は国全体が起業を後押ししている流れがあるのでチャンスではありますが、その流れに便乗しすぎるのもリスクかもしれません。
それでも、起業したい方にチャレンジしていただきたい気持ちはもちろんあります。自分だけで判断するのではなく、起業前から支援機関やメンターの方々に会い、話をすることが大事だと思います。浜松に限らず、サポートしてくれる人は色々な地域にも必ずいるはずなので、ネットワークを使って方向性を一緒に見つけたり、仲間をたくさん作ったりするといいですね。
5年10年と会社を経営している方は、いいことも悪いことも経験しているはずなので、先人からノウハウや経験を得て、起業について考えていただけたらと思います。

編集部コメント

起業に際して、専門家や経営者からのサポートは重要だと思いますし、実際に起業したいと考えている方も、そのような方々と交流できる機会を求めていると思います。起業に関心のある方はぜひ、はましんや支援機関などが行うサポートやイベントを活用し、積極的にネットワークを広げていただきたいと思いました。浜松からスタートアップを盛り上げるべく活動する辻村さんが、今後どのようにコミュニティを広げていくのか楽しみです。

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